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現場が40℃を超える工場で働いていたころ、暑さ対策はほとんど毎年の宿題みたいなものでした。ネットやテレビで紹介されている対策を並べてみても、40℃の現場ではまるで機能しないものが多い。この記事では、実際に試して効いたもの、効かなかったもの、そして「対策ではもうどうにもならない」と感じたときに何を考えたのかを書きます。
この記事でわかること
- 40℃超えの現場で実際に効果があった暑さ対策と、効かなかった対策
- 水分を持ち込めない現場で熱中症を防ぐために必要だったこと
- 暑さ対策が「現場任せ」になっている職場から離れるという選択肢
40℃の現場では、よくある暑さ対策がほとんど効かない
エアコンも遮熱シートも「今年の夏」には間に合わない
暑さ対策の話が現場で出てくるのは、たいてい暑くなってからです。本来なら夏になる前に手を打っておくものなのに、猛暑日が続き始めてからようやく「なんとかしろ」と言われる。ところが現場にエアコンを設置するにも、屋根に遮熱シートを貼るにも工事が必要で、段取りしているうちに夏が終わります。
だから現実的にできるのは、工事のいらないもの、その日のうちに手に入るものに限られます。水に濡らして首に巻くタイプのものは、あるだけで体感がかなり違うので、まとめて用意しておく価値があります。ただ、それだけで1時間ぶっ通しの作業を乗り切れるかというと、そうではありませんでした。
結局いちばん効いたのは大型の送風機だった
意外に思われるかもしれませんが、私がいた現場でいちばん評判が良かったのは大型の送風機でした。送風機は冷たい風を出すわけではないので、40℃の現場でぬるい風を回しても意味がないと思われがちです。でも現場では常に汗をかいているので、風が当たると気化熱で体温が下がる。実際に回してみると、体感はかなり変わりました。
私のいた工場では、数十メートル先まで風が届くとされる大型機を、50万円ほどかけて導入したことがあります。作業中に風が当たって気持ちいいのはもちろん、暑いときは送風機の前で服をまくると一気に涼しくなる。移動式なので、200Vのコンセントからドラムで延長すれば、だいたいどこでも使えます。
暑さ対策を調べると色々出てきますが、テレビで紹介されているようなものは、40℃の場所ではあまり機能しないものが多いんです。だから、どれが自分たちの現場で効くのかを、ひとつずつ試していくしかありませんでした。
試して分かった、対策ごとの向き不向き
その場を動かない作業と、動き回る作業で選ぶものが違う
ライン作業のように、その場からほとんど動かずに作業する人には、スポットクーラーやダクトから冷風を引っ張ってくる方法が向いています。逆に、ある程度動き回る作業なら大型の送風機のほうが使い勝手がいい。同じ「暑さ対策」でも、作業の性質で選ぶものが変わります。
ただ、大型のスポットクーラーにも面倒な点があって、タンクへの給水をこまめにしないといけないし、メンテナンスを怠るとカビ臭い風が出てきます。導入したら終わり、ではなく誰が日々の面倒を見るのかまで決めておかないと、置物になります。
空調服と水冷服は万能ではない
空調服は、ないよりはいいという評価でした。ただ炎天下では熱風が送られてくることになるので、効果は薄くなります。風通しの悪い倉庫のような場所でも厳しい。水冷服は私自身は使っていませんが、稼働時間が長く持たないという話をよく聞きました。
装備で何とかしようとすると、どうしても限界があります。装備は補助であって、根本の環境を変えるものではない、というのが現場にいた実感です。
王道はやっぱり、こまめな水分と塩分
「きりのいいところまで」が一番危ない
現場で熱中症になるときのパターンは、だいたい決まっています。作業をきりのいいところまで終わらせようとして、そこで限界が来る。だから作業場所に水分と塩分を置いておいて、いつでも摂れる状態にしておくのは必須でした。
喉が渇いてから一気にガブ飲みしても吸収されにくいので、とにかく頻繁に摂ること。私は工場にいたころもここは気をつけていましたし、今も炎天下でテニスをするので、水分と塩分の摂り方だけは徹底しています。
水分を持ち込めない現場があった
食品メーカーの工場では、品質管理の都合で現場に飲食物を持ち込めない場所がありました。作業場所に水を置けないわけです。そういう場所での作業は、正直かなり危険でした。
持ち込めない以上、対策は一つしかありません。作業責任者が頻繁に休憩を入れて、意識的に現場から人を出して休ませること。つまり熱中症対策は、装備よりも現場監督やリーダーのマネジメントの問題になります。
測るだけの対策は誰のためのものか
デジタル温度計やWBGT計(暑さ指数を測る機器)を導入する職場もありますが、私の実感としてはあまり意味がありませんでした。基準値なんて夏場はいつも超えているのに、それでも作業は続行されるからです。測定して記録を残すだけなら、現場で作業していない人の自己満足で終わりかねません。
もっと質が悪いのが、トラブル対応のときです。現場が必死に復旧作業をしている横で、事務所にいる人が復旧を急かしてプレッシャーをかける。その結果、熱中症が出る。そういう構図を何度か見ました。暑い現場でのマネジメントの話は、工場の生産技術がきつい理由とも地続きだと思っています。
出典:厚生労働省「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」等
職場での熱中症による死傷災害は、厚生労働省が毎年集計・公表しています。業種別に見ると建設業や製造業の割合が高い傾向があり、屋内でも発生している点は毎年指摘されています。「屋外じゃないから大丈夫」は成り立ちません。
ただ、こうした対策はすべて「会社側がやる気を出せば」の話です。要望を出しても動かない、人が倒れても作業を止めない。そういう職場だと、個人でできることは早々に尽きます。辞めたいと思っているのに自分から言い出せないところで詰まっているなら、退職代行という選択肢もあります。費用はかかりますし、円満退職にはなりにくい手段ですが、自分で切り出せないまま夏をもう一度越えるよりはましな場合もあります。
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同じ製造業でも、現場の温度はまるで違う
製造業とひとくくりにされますが、現場の暑さは工程によってまったく違います。半導体、医薬品、電子部品、精密機器といった分野は、品質のために空調が効いている現場が多い。一方で、鋳造や鍛造、ガラス、セメント、自動車の溶接やプレス工程は、かなり過酷です。建築や土木も夏は全般にしんどい。
食品はものによります。弁当や惣菜、パン製品などは空調が効いているところが多いですが、揚げ物やレトルト、蒸し工程に入ると一気に環境が変わります。同じ会社の中でも配属先で天国と地獄が分かれるのが、この業界の厄介なところです。
見学した現場で一番驚いたこと
私は工場で産廃関係の仕事もしていて、食品残渣や家畜のふん尿を発酵させて肥料にする会社を見学したことがあります。発酵中は内部が70℃近くまで上がるので、周囲も熱くなり、湿度もあってサウナのような状態になっていました。しかも臭いもある。
そんな環境なのに、そこで働いている人たちは平気な顔をしていて、正直びっくりしました。人は慣れてしまうんだな、と思うと同時に、慣れることが本当にいいことなのかは分からないままです。
この夏をどう越えるか、決めるのは自分
まず今日からできることを分ける
暑さ対策は、自分で今日からできることと、会社が動かないとどうにもならないことに分かれます。水分と塩分を作業場所に置いておく、こまめに摂る、首を冷やす。ここまでは個人でできます。送風機の導入、休憩の頻度、作業の中断判断は、会社と現場責任者が動かないと変わりません。
- 個人でできることを埋める: 水分・塩分をいつでも摂れる状態にし、渇く前に頻繁に摂る
- 会社に要望を出す: 工事の要らない送風機や休憩ルールの見直しなど、今年の夏に間に合う案として出す
- 反応を見て判断する: 人が倒れても作業を止めない職場なら、そこで働き続けるかどうかを考える
我慢し続けた先に残るもの
熱中症は、重ければ後遺症が残る可能性もあります。「毎年なんとかなってきたから今年もなんとかなる」で済ませていい種類のリスクではないと思っています。会社が対策にお金も手間もかけず、現場の根性でしのがせ続けるなら、それは職場の性質の問題です。工場勤務を続けるかどうかを考えるきっかけとしては、十分すぎる材料でしょう。
私自身は、社内規定に沿って退職を申し出たときに会社と揉めた経験があります。手順を踏んでも、こじれるときはこじれます。倒れる前に離れたいのに、その一言をどうしても切り出せないなら、代わりに伝えてもらう手段を検討してもいいと思います。会社との関係は基本的に切れますし、費用も相応にかかるので万能な解決策ではありませんが、自分の身体を守るための選択肢のひとつではあります。
体調に異変を感じたときは、対策や転職を考える前にまず作業を止めて涼しい場所で休み、必要なら受診してください。判断は、体調が戻ってからで間に合います。
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