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大阪・関西万博の建設工事をめぐって、大手ゼネコンの現場責任者が工事費の水増し請求に関わった疑いで逮捕された、というニュースが報じられました。会社としては水増し分まで支払っていて損害を被った側なのに、実行したのは自社の社員。この記事では、報じられている内容を整理したうえで、なぜ発注側と下請けの間でこういう不正が成立してしまうのか、そして働く側が何を見ておくべきかを考えます。
この記事でわかること
- 万博工事の水増し請求として報じられている内容の整理
- 発注側と下請けの力関係が不正の温床になりやすい理由
- 「会社は被害者か」という論点と、働く側が持っておくべき目線
万博工事の水増し請求として報じられていること
報道されている流れ
報じられている内容を追うと、大手ゼネコンが万博会場の工事を受注し、その現場責任者だった人物が、下請けの建設会社に対して工事代金を実際より高くして元請けに請求するよう指示していた疑いがある、というものです。元請けは水増しされた金額を支払い、その一部が容疑者の自宅リフォームなどに使われた疑いがあるとされています。会社側の損害はおよそ1400万円規模と報じられています。
出典:報道各社が伝えた事件の概要より
大阪・関西万博の建設工事に関し、現場責任者が下請けに工事代金の水増し請求を指示した疑い。元請け企業側におよそ1400万円規模の損害が生じたとされる。いずれも捜査段階の内容であり、確定した事実として扱うべきものではありません。
まだ「疑い」の段階であることは押さえておく
この手のニュースは、見出しだけが一人歩きします。実際、SNS上では社名を取り違えて全く関係のない会社に矛先を向ける投稿も出ていたようです。逮捕は有罪の確定ではありませんし、捜査中の情報は後から修正されることもあります。ここで書くのはあくまで「そういう構図の事件が報じられた」という前提での話です。
気になるのは「どうやって自分に戻したか」
工事費を水増しすること自体は、極端な話、書類の数字を書き換えるだけでもできてしまいます。むしろ難しいのは、元請けが下請けに支払った金を、どうやって個人の懐に移したのかという部分です。会社の口座から出た金がそのまま個人のリフォーム代になるわけがないので、どこかに経路がある。そして、それが発覚しているということは、そこまで手の込んだやり方ではなかったのだろうと推測できます。
なぜ発注側と下請けの間で成立してしまうのか
下請け側にも「断りにくい理由」がある
水増し請求は、下請けが協力しないと成立しません。では下請けはなぜ乗るのか。考えられるのは二つで、下請け側にも何らかの見返りがあったか、あるいは「協力しないなら次から発注しない」という圧力があったか、そのどちらかです。どちらにしても、継続的に仕事をもらう側は断りにくい。この非対称な力関係こそが、この種の不正の土台になります。
発注の裁量が一人に集まる怖さ
数十社の協力会社、数百人の作業員が動く現場で、見積もりの妥当性を判断し、支払いを決裁するのが実質一人だったとしたら、そこはチェックが効かない。金額が大きくなるほど、100万や300万の差は全体の中に紛れてしまいます。不正が起きるのは、悪い人がいるからというより、一人で完結できる仕組みが残っているからだと考えたほうが実態に近いはずです。
メーカーの生産技術で、業者との契約書を自分の手で取り交わしていた頃の感覚で言えば、見積もりの内容が妥当かどうかは、外から見ると本当に分かりにくい。同じ工事名でも条件次第で金額は変わるし、担当者が「これは必要だ」と言えば、そういうものかと通ってしまう場面はあります。だからこそ、担当者以外の目が入るかどうかが効いてくる。
数字の感覚が麻痺しやすい仕事でもある
仕事では何十億という金額を動かしているのに、自分の給料は月に数十万円。この落差は、大きな案件を任される立場ほど日常的に突きつけられます。だからといって会社の金に手をつけていい理由にはなりませんが、感覚が鈍る環境であることは否定できません。名誉ある仕事を任され、それなりの報酬も得ていたであろう人が、それを全部失う判断をしてしまう。ここが一番もったいない部分です。
「会社は被害者」で片づけられない論点
支払ったのは会社、実行したのも会社の社員
今回の構図では、元請けは水増し分まで支払っているので金銭的には損害を受けた側です。一方で、実行したのはその会社の社員であり、社員の行為を止められなかったという意味では管理責任の話にもなります。完全な被害者と言い切れるかというと、そこは微妙です。過去にも、企業の社員が業務の中で不正を重ね、後から会社ごと問題視された例はいくつもありました。
働く側にとっての意味
この構図で一番割を食うのは、不正に加担していない現場の人たちです。会社名が報じられれば、まじめに работавしていた人も同じ看板の下で見られる。下請けとして協力を求められた側の社員も、断れば仕事が減り、乗れば刑事責任のリスクを負う。上から降ってきた指示が明らかにおかしいとき、その場で「できません」と言える職場かどうかは、実はかなり重要な条件です。
おかしいと思ったときに動けるか
報道の中では、経理側で請求書の内容に違和感を持った人がいたことが端緒になったような描かれ方もしています。数字を見続けている人ほど「この内容でこの金額は高い」という違和感を持ちやすい。ただ、その違和感を上に上げられるかどうかは、その人の性格ではなく職場の空気の問題です。指摘した人が煙たがられる職場では、誰も何も言わなくなります。
不正が起きる職場で消耗する前に考えること
逃げ場のなさが判断を歪める
下請けが水増しに協力してしまう理由も、社員が不正の指示に従ってしまう理由も、根っこは同じで「断ったら仕事や立場を失う」という恐怖です。そして同じ恐怖は、辞めたいのに辞められない人の中にもあります。ここで我慢し続けると、判断そのものが鈍っていく。今の職場でおかしいと思うことに慣れてしまっているなら、それは危険な兆候です。
言い出せないまま消耗しているなら
会社に対して自分の意思を伝えるのが難しい状況は、実際にあります。上司との関係がこじれている、報復が怖い、そもそも話を聞いてもらえない。そういう状態で「まず自分で伝えなさい」と言われても動けません。自分から退職を切り出せない状況が続いているなら、退職代行という手段があることは知っておいて損はありません。
ただし万能ではありません。費用がかかりますし、円満な形にはなりにくく、会社との関係は基本的に切れます。取引先として今後も付き合う可能性がある業界なら、そこも含めて考える必要があります。それでも、追い詰められて何も動けない状態が続くよりはましだという判断はあり得ます。
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次に何を考えればいいのか
自分の職場を「チェックが効くか」で見る
今回の件を他人事として終わらせないために使えるのは、一つの観点だけです。自分の職場で、一人の判断がそのまま通ってしまう領域がどれくらいあるか。発注、承認、検収、支払い。そのどこかが一人で完結しているなら、そこはいつ問題が起きてもおかしくない場所であり、同時に、真面目な人が濡れ衣を着せられかねない場所でもあります。
おかしい指示を断れる環境かを確かめる
次に見るべきは、断ったときに何が起きる職場かということです。指摘した人が評価を下げられる、面倒な人扱いされる、仕事を回されなくなる。そういう反応が返ってくる職場では、いずれ誰かが黙って線を越えます。そのときに一緒に沈むのは、指示を出した人だけではありません。
抜けるという選択肢を持っておく
大きな仕事に関われるのは大企業の魅力です。それは事実だと思います。ただ、その裏側で「断れない構造」に組み込まれているなら、魅力と危険は同じところから来ています。今すぐ辞めろという話ではありません。ただ、いつでも抜けられる状態を作っておくことは、おかしい指示に「できません」と言うための土台になります。
そして、その一歩すら踏み出せないほど追い詰められている場合。自分の口から辞めると言えないまま何か月も過ぎているなら、第三者に間に立ってもらう方法を検討する段階かもしれません。費用や、会社との関係が切れることを織り込んだうえで、選択肢として置いておくものです。
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