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男性の育児休業取得率が初めて5割を超えたというニュースが出ました。数字だけ見れば前進です。ただ、現場で人が抜けたときに何が起きるかを知っている人ほど、素直に喜べない部分もあると思います。この記事では、取得率上昇の中身と、少人数の職場で起きるしわ寄せの構造、そして「誰が悪いのか」という論点を整理します。育休を取る側を責める話ではありません。
この記事でわかること
- 男性育休取得率が5割を超えた数字の中身と、政府の次の目標
- 少人数の職場で1人抜けたときに何が起きるか、その構造
- 会社が保填をしないまま「取得推奨」だけ掲げるとどうなるか
男性の育休取得率が初めて5割を超えた
数字としては確かに前進している
厚生労働省の雇用均等基本調査で、男性の育児休業取得率が50.9%となり、初めて5割を超えたと報じられました。政府が掲げていた2025年の目標を達成した形で、次は2030年までに85%という目標が示されています。女性の取得率も前年から上がって88.3%とされています。
十数年前の感覚からすると、男性が育休を取ると聞いて周囲が「え、取るの?」という反応をしない職場が増えたのは、それ自体が変化です。制度があっても使えない、という状態が長く続いていたので、「使っていい空気」が広がったこと自体は評価していいと思っています。
出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」(報道による)
男性の育児休業取得率は50.9%となり、初めて5割を超えたとされる。女性は前年より1.7ポイント増の88.3%。政府は2030年までに男性85%を目標に掲げている。
ただし数字は「取得したかどうか」しか見ていない
気をつけたいのは、この取得率という指標が「何日取ったか」「どう過ごしたか」までは表していない点です。数日の取得も1年の取得も、集計上は同じ「取得した1人」になります。取得率が上がったからといって、家庭の負担配分が同じだけ改善したとは限りません。
実際、このニュースに寄せられたコメントには、夫が育休を取ったのに育児をせずゲームやスマホばかりだった、という声が並んでいたそうです。もちろん全員がそうだという話ではありませんが、取得率という一つの数字だけで実態を語るのは危ういということです。
少人数の職場で1人抜けると何が起きるか
2人しかいない部署で1人休むということ
工場の生産技術のような職種は、事業所に2人しかいない、ということが珍しくありません。設備の面倒を見て、トラブルが出れば呼ばれて、業者や関係先とのやりとりもある。その状態で1人が長期で抜ければ、残った1人の仕事量はそのまま増えます。
しかもこの手の業務は「事務所のみんなで分担」がしづらい。設備や図面の背景を知らない人に振っても、説明する時間のほうがかかってしまう。結果として、専門職ほど代替が効かず、残った人に全部乗ります。人が減った分だけ仕事が減るわけではないのが、現場のいちばんしんどいところです。
増えた仕事に手当がつかないという不満
ここで不満が噴き出すのは、業務量が1.5倍になっても給与が変わらないからです。誰かの穴を埋めることは評価されにくく、「今回は頼む」で終わる。次の期の評価に少し反映されるかどうか、という程度でしょう。
その状態が続くと、怒りの矛先が休んだ本人に向きやすくなります。ネット上で「独身ハラスメント」といった言葉が出てくるのも、その構造から来ています。ただ、これは向ける相手を間違えていると思います。休む権利を使った人ではなく、休まれる前提で人員を組んでいない会社の設計に問題があるからです。
引き継ぎが機能しないと恨みだけが残る
もう一つ、現実的に効くのが引き継ぎの質です。期限が迫った案件を片付けずに休みに入られると、残された側は状況把握からやり直しになります。制度として休めることと、業務を整理してから休むことは別の話で、後者が抜けると人間関係だけが壊れます。
逆に言えば、休む側が引き継ぎに割く時間を会社が確保していない、という問題でもあります。休む直前まで通常業務を回させておいて、引き継ぎは自分でなんとかしろ、では両者が損をします。
会社が「浮いたお金」をどう使っているか
育休中の給付は雇用保険から出ている
育児休業給付金は、原則として雇用保険から支給されます。休業開始から一定期間は賃金の一定割合、その後は割合が下がるという仕組みで、支給要件や率は制度改正で変わるため、最新の内容は厚生労働省やハローワークの案内で確認してください。
給付率や対象期間、上限額は制度改正が入る領域です。「何割もらえる」といったネット上の情報は古いことがあるので、実際に取得を検討する際は勤務先の人事か公的窓口で確認するのが確実です。
浮いた人件費が現場に還元されるか
会社側から見ると、休業中の社員に対しては給与の支払いが発生せず、社会保険料についても免除の仕組みがあります。つまり、その期間の人件費負担は軽くなります。
問題は、その分を代替要員の確保や、カバーした人への手当に回しているかどうかです。回していなければ、負担だけが現場に残り、会社の帳簿だけが軽くなる。取得推奨を掲げながら保填を一切しない会社は、制度の看板を掲げているだけで中身が伴っていない、ということになります。
そして残念ながら、そういう会社のほうが多いのではないかと感じます。「仕事ができる人に業務が集中する」構造とも地続きで、これは以前に仕事ができる人に業務が集中する会社の末路でも触れた話とつながります。
もしあなたが今、誰かの穴埋めで潰れかけていて、それでも辞めると言い出せない状態にあるなら、退職の意思を代わりに伝えてもらう退職代行という手段があります。費用がかかりますし、円満退職にはなりにくい方法ですが、話し合いの場に立つ体力すら残っていないときの選択肢としては現実的です。
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「休んだのに育児をしない」という声
取得率のニュースに集まった声の中には、夫が育休を取ったことでかえって負担が増えた、という趣旨のものが目立ちました。子どもが一番大変な時期に目の前でゲームをしていた、食事の用意を求められた、といった内容です。
これが事実であれば、家庭側から見た育休は「大人の世話が1人増えた」状態です。会社側にはしわ寄せが出て、家庭側でも負担が減らない。誰も得をしていない使われ方になってしまいます。
制度の評価は「率」だけでは決まらない
だからこそ、取得率85%という次の目標を追うときには、日数や取得後の実態をどう見るかが問われると思います。数字を上げること自体が目的化すると、短期間だけ形式的に取らせる運用になりやすい。現場で人事評価や実績づくりの数字を追わされた経験がある人なら、目標値だけが独り歩きするときの空気は想像がつくはずです。
取れる会社と取れない会社の差
もう一点、平均値の裏には企業規模による差があります。人員に余裕のない中小規模の職場では、制度上は取得できても実際には言い出しにくい、という状況が残っていると指摘されています。全体の取得率が5割を超えたことと、自分の職場で取れることは、まったく別の話です。
自分の職場をどう見極めるか
見るべきは制度の有無ではなく運用
育休に限らず、制度があるかどうかより、実際に使った人がどう扱われたかを見るほうが正確です。判断材料としては次のような点があります。
- 取得実績: 直近数年で、同じ職種・同じ規模の部署に取得した人がいるか
- 代替の有無: 抜けた期間、代わりの人員が入ったのか、残った人が丸かぶりしたのか
- 復帰後の扱い: 戻ってきた人が元の業務・評価に戻れているか
この三つが揃わない職場は、取得推奨を掲げていても実態は苦しいままだと考えたほうがいいと思います。
穴埋め側に回ったときの考え方
逆に、自分がカバーする側になったときは、怒りを休んだ本人に向けても状況は改善しません。増えた業務を上長に可視化して、優先順位を落とすものと止めるものを決めさせる。それが通らないなら、その職場は誰かが休むたびに同じことを繰り返します。
そして、これは自分が休む番になったときに跳ね返ってくる問題でもあります。今回抜けた人を吊るし上げる文化を作れば、次に休みたい人は言い出せなくなる。損をするのは結局、その職場に残り続ける全員です。
限界まで来ている場合
ただ、構造の話をしても、いま目の前で終電まで残っている人の負担は減りません。人員配置を変える権限が自分にないのなら、環境を変えるほうが早い場合もあります。退職の意思を伝えたあとに引き止めや条件交渉で消耗するのが目に見えているなら、退職代行を使って手続きだけ進めるという判断もあり得ます。会社との関係は基本的に切れますし、費用も発生するので万能ではありませんが、消耗し切る前の逃げ道としては知っておいて損はありません。
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無料で相談してみる →男性の育休取得率が5割を超えたことは、間違いなく前進です。あとは、その休みを支える側の負担を会社がどう埋めるか。数字が伸びるほど、そこを放置している会社の粗さが見えやすくなっていくはずです。自分の職場がどちら側なのか、次に誰かが休むときの対応をよく見ておくといいと思います。

