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ライン設計や設備導入をやるつもりで生産技術として入社したのに、気づけば下水のマンホールを開けて水を採取し、他人が詰まらせたトイレをラバーカップでパコパコしていました。この記事では、私が工場の生産技術として実際にやらされた「これ俺の仕事か?」という業務と、そのときに何を考えたのかを書きます。きれいな結論はありません。ただ、人が少ない職場で何が起きるかの記録です。
この記事でわかること
- 生産技術が実際に任された「本業と関係ない仕事」の中身
- 人が少ない工場ほど何でも屋化が進む理由
- 「これ俺の仕事か?」が転職を考える引き金になった経緯
ライン設計をやるはずが、コーキングがうまくなった
最初に来た依頼は自動ドアの故障連絡
生産技術として工場に入って、これからライン設計や設備導入をやっていくんだと思っていました。ところが現場に入ると「自動ドアが壊れたからなんとかしてくれ」と言われる。やることは自動ドアのメーカーに連絡するだけです。こんなことも頼まれるのか、と思ったのを覚えています。
次は雨漏りでした。何箇所か漏れているから見に来てくれ、と。この工場はどれだけ雨漏りするんだと思いながら対応しているうちに、コーキングがうまくなりました。生産技術として身につけたかったスキルとは、だいぶ違う方向です。
「誰の仕事か」がそもそも決まっていない
今になって振り返ると、自動ドアも雨漏りも「工場の設備」ではあります。だから生産技術に振られること自体に、まったく理屈がないわけではない。ただ、じゃあ他にどの職種がやるのかと言われると、確かに答えに詰まる。誰の仕事とも決まっていない仕事が、押し付け合いの末に生産技術のところに落ちてくる。私の会社では、それが半ば恒常的な状態になっていた気がします。
下水のマンホールを開けて水を採る仕事
年1回の水質検査は生産技術の担当だった
教わった業務のひとつが、年1回の水質検査でした。工場のルールで実施が決まっていて、内容としては分析会社に依頼して検査キットを受け取り、社内で採水して分析会社に返送し、成績書を受け取って保管する。説明を聞いた限りでは「連絡して採水するくらいですね」という話です。難しくはない。
問題は採水の場所でした。外の下水のマンホールを開けて採る必要がある。しかも、採水中に誰かが大便をすると大腸菌の数値が上がるので、そのあいだトイレを使わないよう注意喚起しておけ、と言われました。
初めてマンホールを開けたときは、それだけで気が滅入りました。Gがめちゃくちゃいる。下水のマンホールだからそりゃいるか、と自分を納得させながら、長い柄杓のようなものを突っ込んで流れてくる水を採取する。なんで生産技術がこんなことをしないといけないのか、と作業しながらずっと思っていました。
採水中に紙が流れてきた日
注意喚起はしていました。それでも、採水中に紙のトイレットペーパーが流れてきたことがあります。あのときは発狂していました。しかもタイミングが悪いと結果にも響く。実際、大腸菌の数が基準を圧倒的にオーバーして、やり直しになったこともあります。
やり直しということは、また同じことをもう一度やるということです。マンホールを開けて、Gを見て、水を採る。これを本業の合間にやるわけです。ライン設計をしに来たはずなんだけどな、という気持ちは消えませんでした。
労務調整からNDA契約まで、範囲が広がっていく
組織図上、現場のトップになっていた
人が少ない工場に移ってからは、さらに範囲が広がりました。労務管理と呼ぶほど大層なものではないですが、勤怠の調整のような仕事も回ってきます。組織図の上では生産技術が現場の一部の部署のトップになっていたので、出勤調整までしないといけなかった。
この手の仕事で効いてくるのが、日頃どれだけ現場とコミュニケーションを取っているかです。ある程度の信頼関係がないと、頼み事なんてまともに聞いてもらえません。設備の話をしに行っているだけでは足りない。技術職として採用されたはずなのに、評価されるのは調整力のほうだったりする。
業者や電力会社とのNDA契約も生産技術
私が働いていた頃は、設備業者や電力会社とのNDA契約、いわゆる秘密保持契約の締結も生産技術がやっていました。契約の話は本来なら別の部署の領域だと思うのですが、設備の話を持ってきているのが生産技術だから、そのまま流れで担当することになる。
ここで書いているのはあくまで私が在籍していた工場での運用です。同じ生産技術という職種でも、会社や工場の規模によって担当範囲はかなり変わります。求人票の職務内容だけでは、この「範囲外の仕事」は見えません。
他人のトイレ詰まりを直したとき、転職を考えた
掃除のおばちゃんが帰った後だった
決定的だったのは、事務所近くのトイレが詰まったときでした。誰かが詰まらせて、流しても流れない状態になっている。トイレは毎日掃除してくださるおばちゃんがいるのですが、その人が仕事を終えて帰った後だったので、連絡は生産技術に来ました。
「設備故障だ、なんとかしてくれ」と言われれば、確かに設備といえば設備です。でもやることはラバーカップでパコパコするだけです。
なんで自分が他人のクソ詰まりを解消しないといけないのか、とぶち切れながらやっていたのを覚えています。あのときは、めちゃめちゃ転職しようと思いました。給料が下がったわけでも、怒鳴られたわけでもない。ただ、この仕事を自分がやっている理由がどこにも見当たらなかった。
大企業でも、小さい工場では起きる
その会社は大企業でした。それでも規模が小さめの工場に配属されていた時期だったので、こういうことがごく稀に起きます。人が少ないと、何でも屋の要素がどんどん強くなっていく。専門職として採ったはずの人間に、誰の担当でもない仕事が全部集まってくる。
この構造自体は工場に限った話ではないと思います。動ける人、断らない人のところに業務が集中していくのは、どこの会社でも見る光景です。同じ話を別の角度から書いたものとして、仕事ができる人に業務が集中する会社の末路もあります。
ただ、私は「トイレを直したから辞めます」とはすぐには言えませんでした。理由が小さすぎる気がしたし、業務そのものは数十分で終わる。積み上がっていく違和感を、その都度飲み込んでしまう。もし今、自分から辞意を切り出せないまま消耗しているなら、退職代行という選択肢もあります。費用はかかりますし、円満退職にはなりにくい手段ではありますが、限界まで我慢するよりはましなケースもあります。
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単発の理不尽より、範囲の曖昧さがきつい
振り返ると、しんどかったのは一つひとつの作業そのものではありませんでした。下水の採水もトイレの詰まりも、時間で言えば大したことはない。きつかったのは、自分の職務範囲がどこまでなのか、誰も定義していなかったことです。
範囲が決まっていないと、断る理由が作れません。「それは私の仕事ではないので」と言うための線が、そもそも引かれていない。だから来た球は全部打つことになる。人が減れば減るほど、この状態は加速します。
辞めるかどうかを決める前に見ておきたいこと
もし今、似たような状況にいるなら、まず「この仕事が自分に来ている理由」を一度言語化してみるといいと思います。組織上そうなっているのか、人が足りないからなのか、単に断らないからなのか。理由によって打ち手が変わります。
- 担当範囲を確認する: 自分の職務がどこまでと定義されているか、規程や職務分掌を見てみる。書いてないなら、書いてないこと自体が問題です。
- 頻度と時間を記録する: 範囲外の仕事にどれだけ時間を使っているか。感覚ではなく数字にすると、上に相談する材料になります。
- 改善の見込みを見積もる: 人が増える予定があるのか、無いのか。無いなら、この状態は続くという前提で考えることになります。
そのうえで、改善の見込みが立たないと判断したなら、動くしかありません。私自身は退職を申し出るタイミングで会社と揉めた経験があるので、辞める側にも相応のエネルギーがいることは知っているつもりです。
言い出せないまま何年も過ごすくらいなら、外部に間に入ってもらう手もあります。ただし退職代行を使うと会社との関係は基本的に切れますし、費用も発生します。万能の手段ではありません。それでも、自分の口から切り出すことがどうしても難しい状況なら、検討する価値はあります。
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